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2017.08.06 Sunday

『聞こえない親をもつ聞こえる子どもたち』

こんにちは、ロルファーなつこです。


ヒトの赤ちゃんは1歳前後で言葉を話し始める割合が多いと言われますが、

手話で話す両親のもとに生まれた赤ちゃんは5〜6ヵ月で手話を使うようになる、

と以前TVで見たことがあります。

(最初に話す手話はやはり「ママ」とのこと。)

 

両親が発声を伴う言語を使う場合、赤ちゃんもそれに倣いますが、

1つの単語を話すのには70以上の筋肉の発達が必要です。

 

手話に必要な筋肉はそれよりも早く発達するので、その分早く、

自分の言葉を手話でアウトプットができる、というわけです。


自我が芽生えるのは大体生後1.5ヵ月が目安だそうですが、

両親(or最も身近な大人)が手話を第一言語とする場合、

自我と自己表現のタイムラグの間で感じるジレンマ・ストレスが

少なくて済むのだなぁ、と感銘を受けた覚えがあります。

 

で、そのように手話を第一言語として育つと、

どのように世界を知覚していくのだろう、と興味を持っていたのですが、

聾(ろう)の両親の間に生まれ育ちながら、自身は”聞こえる”方々を

「コーダ」(CODA = Children of Deaf Adults)と呼ぶ(ことがある)と知り、

『聞こえない親をもつ聞こえる子どもたち』という本を読んでみました。

 

『聞こえない親をもつ聞こえる子どもたち -ろう文化と聴文化の間に生きる人々』

/ポール プレストン著


この本は、「ろうの両親の間に生まれ育った聞こえる子供」であった成人150名を、

同じくろうの両親を持つ医療人類学博士(著者)がインタビューし、

聴こえる世界と聴こえない世界の狭間に生きる彼らのアイデンティティを探求する

フィールドワークです。

 

ろうの両親の間に生まれ育った方々は、ろうの両親に育てられることから

文化的にはろうに所属しますが、肉体的には”聴こえる人”なので、

成長にともなって聾者と聴者の文化との行き来を体験します。

 

私たちはみな成長の段階で家の外と関わり始めますが、CODAはそこで、

育った環境と異なる文化を新たに体験しなおすことになるんですね。

 

これは海外など異なる文化圏に引っ越すのと似ていますが、

身体的特徴と連動しているので、知覚の使い方の違いが加わります。

 

最初TV番組を見た際には、”親に対する自我と自己表現の間の

ジレンマ・ストレス”の少なさについて感銘を受けたものの、

まるでそれを外界に出る際に後から体験するかのようにも思えます。


私たちは最初にどのように世界を知覚するのか?

それはどの程度環境によるものなのか?

どの程度両親(or養育する大人)のやり方をなぞるのか?

私たちの身体はどこまで環境に対応できる可能性があるのか?

 

そしてそこに親と子という関係性が含まれる場合、

どういうアイデンティティを持つようになるのでしょう?

 

それらに思いを馳せるとき、自分の想像力の限界を感じます。

 

からだは外の刺激に反応することで発達・変化していくので、
その可能性は本当に未知です。私が思っているよりもはるかに、

ヒトの発達は後天的な環境によって決定するのだと思います。

 

この本のインタビューによると、CODAという共通した体験を持ちつつも、

自身の育ってきた環境をどのように認識しているかは、その人によって

千差万別。

 

例えば、子供のころから両親に変わって通訳をすることを

当然のことと思っている人もいれば、誇りに思う人も、重圧に感じる人も、

もううんざりだという人も。

 

興味深かったのは、彼らが感じる声で話すとの手話で話すことの違いについて。

 

以下抜粋

===========================

声で話すのは、「限界を感じさせ」「よそよそしく」「正式で」

「きっちりしている」と特徴づけられることが多かった。

対照的に、彼らは、「おしゃべりするためだけに」くだけた感じで手話を使う

と語った。(中略)

手話で話しているときには、もっと「親しみがこもっていて」「自然」で

「表現に富んでいて」「快適」に感じると語ることが多かった。

手話を使わない人たち、あるいは初歩的な手話しか知らない人たちでさえ、

手話で話すことと声で話すことに対して、

同じような対照的な結びつきの多くを認めた。

===========================

 

手&腕はロルフィングでも「自己表現」・「コミュニケーション」を表す部位

として見るため、まさに手話はそのもの。手話を習得したら、

この体感を何となく感じられるようになるのかもしれません。


それから、この本によって、今まで想像が及ばなかった

「聞こえないこと」と「聞こえること」とはどういうことなのか?

をもう一歩知ることができたような気がします。

 

その中の一節

===========================

彼ら(聞こえない両親を持つ聞こえる人たち)が両親によって初めて呼ばれる

自分の名前は、手話で表される”サインネーム”と、声で呼ばれる名前があり、

後者は本来の発音とは違うように発音されている

(恐らく後に知る聴者による正確な発音とは違う発音をされている)が、

多くのCODAはそれに特別な愛着を抱いていることがわかった。

===========================

という箇所は、胸に迫るものがありました。

彼らの文化を、主流(ここでは聴者)の価値観で測ることの取りこぼしを痛感。

 

私が自分のよりどころとしている価値観が、人間全体でいうと

非常に限定された地区の、限定された時代の、ある特定のからだの使い方に

基づいたものでしかないことを思い出させてくれます。

 

私としては、からだを色んなやり方で使うことによって、その感覚を体験し、

自分の中にある限定をゆるめていきたいものだなぁと。

 

色んな側面から感想を持ったので全部をここに書くことは難しいのですが、

名著です。ご興味のある方、ぜひ読んでみてください。

 

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